「効果的なマラソントレーニング方法を学びたい」という方へ。
ウエハラです。
このブログは主にマラソンでサブ3(3時間切り)を目指している方に向けて記事を書いていますが、本記事はマラソン初心者でも参考になる内容を書いていきますので、マラソン初心者も敬遠せずにどうぞご覧くださいませ。
本記事は、「トレーニング計画の作成方法 4つの手順」シリーズ。
#STEP3 期分け (ピリオダイゼーション)
について解説していきます。
■この記事を読んで欲しい人■
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■この記事を読むメリット■
① 効果的な「トレーニング計画」の立て方が分かる。
② 「期分け(ピリオダイゼーション)」の基本的な考え方が分かる。
では、より効果的なマラソントレーニング方法について学んでいきましょう!
■この記事を書いている人:ウエハラ■
●ランニング歴15年です。
●セルフコーチングなので自分で勉強しながらトレーニングしてきました。
●フルマラソンベストは2時間37分30秒。
●マラソン指導実績:3年間で8人がサブスリー達成。
●保有資格:NESTA-PFT (全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会-パーソナルフィットネストレーナー)
4つの手順まとめ記事はこちら
→ 【まとめ】マラソン トレーニング計画の作成方法【4つの手順】
STEP1.
→ 【トレーニング計画の作成 #1】「現状VDOT」と「トレーニングペース」を把握しよう【マラソン練習】
Contents
おさらい
トレーニング計画を立てる4つの手順
では、4ステップを改めて並べてみます。
「トレーニング計画」の全体感を把握しておきましょう。
STEP1.
「現状VDOT」と「トレーニングペース」を把握する。
STEP2.
「目標VDOT」と「トレーニングペース」を把握する。
STEP3.
期分け (ピリオダイゼーション)
STEP4.
マイルストーンを設定する。
トレーニングの本質は、「現状」から「目標」までのギャップを目標期日までに埋めることです。
「期分け(ピリオダイゼーション)」の基本的な理解
さて、今回の記事ではSTEP3の「期分け(ピリオダイゼーション)」について解説していきます。
「期分け(ピリオダイゼーション)」とは、
特定の身体スキルを集中して伸ばす期間を設けること。
「期分け(ピリオダイゼーション)」とは、
期分け(ピリオダイゼーション)
= 「どの時期にどういった練習をすべきか(どの身体スキルを伸ばすべきか)」
を考えること。
すなわち、特定の身体スキルを集中して伸ばす期間を設けることです。
身体スキルを「スピード」「スピード持久力」「スタミナ」の3つに分類する。
「期分け(ピリオダイゼーション)」では、特定の身体スキルを集中して伸ばす期間を設ける訳ですが、そもそも“マラソントレーニングで伸ばすべき身体スキル”とはどう言ったものがあるのでしょうか?
この手の話題になると人によっていろんな考え方があるのですが、僕は“マラソントレーニングで伸ばすべき身体スキル”は大きく3つに分けられると考えています。
それが、
1. 最大スピード (VO2max)
2. スピード持久力 (LT値)
3. スタミナ
です。
細かいところを言えばもっとたくさんあるのですが、ここでは分かりやすく3つに留めておきます。
つまり、「期分け(ピリオダイゼーション)」では、
「この時期は最大スピード養成に特化して練習する」
「この時期はスピード持久力養成に特化して練習する」
「この時期はスタミナ養成に特化して練習する」
といった具合に時期によって鍛える身体スキルを変えていくのです。
でも、なんで時期によって鍛える身体スキルを変えていかないといけないの?
例えば、受験勉強や資格の勉強をしたことがある方は思い出して欲しいのですが、多分多くの人は時期によって勉強の仕方を変えてきましたよね?
「この時期は数学の勉強に力を入れよう」
「この時期は英単語をたくさん覚えよう」
「試験が近くなってから、過去問題をたくさん解こう」
などといった感じです。
基本は「基礎強化」→「特異的トレーニング」
ここまで「期分け(ピリオダイゼーション)」とは何か、その重要性について書きました。
では、実際に「期分け(ピリオダイゼーション)」はどういう手順で組み立てれば良いのでしょうか。
しかし、一つの汎用的な考え方を示すとすれば以下のようなものが挙げられます。
それが、
「基礎強化」→「特異的トレーニング」
という流れでトレーニングの期分けを行なうという方法です。
ケニアで多くの世界トップランナーを指導しているレナート・カノーバ氏もトレーニング期を大きく「基礎強化(一般的 / General)」と「特異的(Specific)」に分けて考えているようです。

上の図では、左が「基礎強化フェーズ(Base)」、右が「大会(Competition)」を示しています。
つまり、トレーニング期は左から右に進んでいます。
そして、縦軸の上方向は「一般的スピード (General Speed)」、下方向は「一般的スタミナ(General Endurance)」を示しています。
要するに、前述した「最大スピード」と「スタミナ」ですね。
そして縦軸の真ん中には「特異的(Specific)」という言葉が書かれています。
これは、前述した身体スキルでいうところの「スピード持久力」に近いだろうと僕は解釈しています。
トレーニング初期は「一般的な基礎スピードと基礎スタミナ」を強化し、大会が近づくにつれて「特異的(Specific)なトレーニング」つまり「スピード持久力」を伸ばすトレーニングに集約させていくというイメージです。
「スピード持久力」とは、レースペースに近いペースを持続させる能力のこと。
つまりレースの実戦に近いペースなので「特異的(Specific)」ということです。
自分の現状の力が測れる、本番に近いシチュエーションで練習できる、本番での再現性が高いといった特徴があります。
受験勉強でも、本番(受験)が近くなってくると「模擬試験」を受ける回数が増えるもんね。
マラソン練習でも本番のレースが近づくにつれて、より実戦的なトレーニングを増やしていかないといけないということか。
「期分け(ピリオダイゼーション)」のパターン3選
以上が「期分け(ピリオダイゼーション)」の基本的な理解になります。
要するに「基礎強化」→「特異的トレーニング」という大きな流れを捉えましょうということです。
それぞれトレーニング期間を「16週間」として考えてみます。
① スタミナ → 最大スピード → スピード持久力
最初に「スタミナ強化」→次に「最大スピード強化」→最後に「スピード持久力強化」という流れのパターンです。
トレーニング計画例)
スタミナ強化期:1~6週目 (6週間)
最大スピード強化期:7~12週目 (6週間)
スピード持久力強化期:13~16週目 (4週間)
長い距離を走るのが好きな方、スタミナ型のランナーはこのトレーニング計画の組み方がおすすめ。
あるいは、スタミナ不足を感じていてスタミナ強化をじっくり行いたい方にもハマると思います。
時間がかかるものから先に取り組んでおくのも一つの手です。
② 最大スピード → スタミナ → スピード持久力
最初に「最大スピード強化」→次に「スタミナ強化」→最後に「スピード持久力強化」という流れのパターンです。
トレーニング計画例)
最大スピード強化期:1~6週目 (6週間)
スタミナ強化期:7~12週目 (6週間)
スピード持久力強化期:13~16週目 (4週間)
短く速く走るのが好きな方、スピードに自信がある方におすすめ。
また、陸上競技の中距離種目(800m、1500m)、あるいはサッカーなど瞬発系のスポーツ出身の方はこの順番を好む傾向にあります。
トレーニング中期以降も全体的な練習の質が高まるので、効率は非常に良いですね。
トレーニング期間があまり長く用意されていない時、短期間で走力をアップさせたい時にもおすすめです。
ただし、トレーニング初期で走り込みも十分に行えていない段階からスピード練習で高い負荷を身体に与え過ぎてしまうと、怪我のリスクが非常に高くなります。
そのため、スピードから仕上げていく場合は、怪我を避けるようなスピード練習の設計、身体のケアにも十分留意する必要があります。
なので僕が一般の市民ランナーにアドバイスする時は、トレーニング期間に余裕があるならば①か③のパターンをおすすめしています。
③ スタミナ・最大スピード → スピード持久力
最初に「スタミナ」と「最大スピード」を同時並行で強化→最後に「スピード持久力強化」という流れのパターンです。

前述のレナート・カノーバ氏式のイメージですね。
「スタミナ」と「最大スピード」の両極端の身体スキルを鍛えることから始め、徐々に「特異的(Specific)トレーニング」すなわち「スピード持久力強化」に集約させていきます。
トレーニング計画例)
最大スピード・スタミナ強化期:1~8週目 (8週間)
スピード持久力強化期:9~16週目 (8週間)
③のパターンの特徴は「実戦的なトレーニング」を重視していることです。
ここで最優先にしているのは「いかに速く走れるか(最大スピード)」でもなく「いかに長く走れるか(スタミナ)」でもありません。
最優先は「いかに速く長く走れるか(スピード持久力)」なのです。
レナート・カノーバ氏はこの考え方を非常に重視しているように見えます。
The key of training is to increase the SPECIFIC SPEED ENDURANCE, not the speed.
トレーニングの鍵は「特異的なスピード持久力」を向上させることだ。スピードではない。
– Renato Canova / レナート・カノーバ
参考:RUNNING SCIENCE
しかし、パターン③のように「実戦に近いトレーニング」を重視するということは“質の高いトレーニングを豊富な量こなす”ということです。
マラソン練習において「質と量の両立」は永遠のテーマと言ってもいいくらい難しいものです。
“質の高いトレーニングを豊富な量こなす”
そして、それをトレーニング期間を通して継続する。
これは理屈上は正解なのですが、一般の市民ランナーにとっての実行可能性を考えると厳しいものがあります。
日々の高い集中力、良質な休養・栄養、恵まれた練習環境などといった様々な要因が関係してきます。
とはいえ、「実戦的なトレーニング」を中心に練習を組み立てることは一般の市民ランナーにとっても非常に効果的です。
完璧ではないにしても、概念としてパターン③を意識しながらトレーニング計画を組んでみるのも大いに効果があるでしょう。
「期分け(ピリオダイゼーション)」はあくまで意識レベルで良い。
最後に、ここまでがっつり解説してきて言うのもなんですが、「期分け(ピリオダイゼーション)」はあくまで意識レベルのものです。
などと、ガチガチに期分けを設定する必要はありません。
期分けに慣れない内は、とりあえず大枠として
「基礎強化」→「特異的トレーニング」
の概念を持っておけば十分です。
また、
スピード練習は一切しない!
という極端な考え方も良くありません。
「期分け(ピリオダイゼーション)」はどの身体スキルを“重視”すべきかというだけであって、一つを重視するあまり他が疎かになってはバランスが悪くなってしまいます。
スタミナ強化期であっても、やはりスピード練習はちょくちょく入れたほうが良いです。
また、スピード強化期であっても、やはりスタミナ練習は定期的に行ないましょう。
最終的には、この辺りのバランス感覚が鍵を握っています。
「期分け」は極端に考えず、あくまで“意識レベル”でいいんだね。
まとめ:
期分け (ピリオダイゼーション)
では、まとめまーす。
【まとめ】
トレーニング計画の作成 #STEP3
期分け (ピリオダイゼーション)
1. 「期分け(ピリオダイゼーション)」とは、特定の身体スキルを集中して伸ばす期間を設けること。
2. マラソン練習で伸ばすべき身体スキルは大きく以下の3つに分けられる。
● 最大スピード (VO2max)
● スピード持久力 (LT値)
● スタミナ
3. 基本は「基礎強化」→「特異的トレーニング」
トレーニング初期は「一般的な基礎スピードと基礎スタミナ」を強化
↓
大会が近づくにつれて「特異的(Specific)トレーニング」つまり「スピード持久力」を伸ばすトレーニングに集約させていく。
4つの手順まとめ記事はこちら
→ 【まとめ】マラソン トレーニング計画の作成方法【4つの手順】
STEP1.
→ 【トレーニング計画の作成 #1】「現状VDOT」と「トレーニングペース」を把握しよう【マラソン練習】
楽しいランニングライフを!