「効果的なマラソントレーニング方法を学びたい」という方へ。
ウエハラです。
このブログは主にマラソンでサブ3(3時間切り)を目指している方に向けて記事を書いていますが、本記事はどちらかというと「スポーツ生理学」についてのお話です。
マラソンのレベルに関わらず、人間の身体の仕組みに興味のある方はぜひ読んでみてください。
では今回は、「マラソン講座 / エネルギー代謝編」第1弾。
『3種類のエネルギー代謝システム』
これについて解説してみようかと思います。
『3種類のエネルギー代謝システム』の
それぞれの細かい解説はこちらから。
(本記事最下部にもリンクあります。)
↓↓↓
関連記事:ATP-CP系 とは?【マラソン講座 / エネルギー代謝②】
▪️動画でも同じトピックで解説していますので、
文章を読むのが面倒だという方はこちらもどうぞ▪️
↓↓↓
マラソンランナーの「エネルギー代謝」を学ぼう
【有酸素系・解糖系・ATP-CP系】
■この記事を読んで欲しい人■
①
②
③
■この記事を読むメリット■
① 走っている時に、人間がどうやってエネルギーを生み出しているか。
エネルギー代謝のメカニズムが分かる。
② 3種類のエネルギー代謝システムについて、その全体像を把握できる。
③ エネルギー代謝の仕組みを理解することで、効果的なマラソン練習を組み立てることができるようになる。
■この記事を書いている人■
●ランニング歴14年です。
●セルフコーチングなので自分で勉強しながらトレーニングしてきました。
●フルマラソンベストは2時間37分30秒。
●マラソン指導実績:3年間で8人がサブスリー達成。
●保有資格:NESTA-PFT (全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会-パーソナルフィットネストレーナー)
Contents
エネルギー代謝 とは、
物質をエネルギーに変換する化学反応
また、運動時に限らず、私達は普段生活する中でもエネルギーを必要としています。
例えば、心臓を動かしたり、呼吸をしたり、考えたり、手を動かしたり、話したり、といった日常の基本的な活動においてもエネルギーは使われます。
心臓を動かし続けていないと死んじゃうよ。
だから、私達は生きる為、身体を動かし続ける為に、常に何かしらの方法でエネルギーを生み出さなければなりません。
この、「何かしらの物質をエネルギーに変換する化学反応」が「エネルギー代謝」です。
エネルギーの源は、「ATP (アデノシン三リン酸)」!
そして、それらの反応はいずれも最終的には、ある“エネルギーの源”と言われる物質を作り出すのです。
何それ知りたい!
ずばり、“エネルギーの源”とは「ATP (アデノシン三リン酸)」という物質のことです。
アデノシンサンリンサン・・・
なんだか聞き慣れない言葉が出てきたぞ。
さて、ATP(アデノシン三リン酸)という言葉を分解すると・・・
A … Adenosine (アデノシン)
T … Tri (3つの)
P … Phosphate (リン酸)
という名前の通り、アデノシンに3つのリン酸がくっ付いているという物質です。
イメージは↓の感じ。

でも、これが何で“エネルギーの源”なの?
ATPがP(リン酸)を1個放出すると、ADP (アデノシン二リン酸)という物質に変わります。
この化学反応が起きる際にエネルギーが発生するのです。

ちなみに、ADP(アデノシン二リン酸)という言葉を分解すると・・・
A … Adenosine (アデノシン)
D … Di (2つの)
P … Phosphate (リン酸)
これがエネルギーを生み出す仕組みなんだね!
その為、私達が身体を動かし続ける為には、何らかの方法で「ATPを再合成」する必要があるのです。
そのATPを再合成してエネルギーを生み出す仕組みが、以下の「3種類のエネルギー代謝システム」です。
3種類のエネルギー代謝システム
① ATP-CP系 (ATP-PCr系) |
② 解糖系 (無酸素性解糖系) |
③ 有酸素系 (TCA回路) |
|
性質 | 無酸素性 | 無酸素性 | 有酸素性 |
特徴 | 瞬発的で、 大きなエネルギーを 発揮する。 |
比較的素早く、 ある程度大きなエネルギーを発揮する。 |
持続的で、 小さなエネルギーを 発揮し続ける。 |
持続時間 | 7~8秒間 | 33秒間 | 2時間以上 |
主な 原料 |
・CP (クレアチンリン酸) |
・糖質(グリコーゲン) | ・糖質(グリコーゲン) ・脂質(トリグリセリド) ・たんぱく質(アミノ酸) |
主な 活用場面 |
・100m走 ・跳躍種目 ・投てき種目 ・高強度の筋トレ |
・400m走 ・800m走 ・1500m走 ・5000m走 |
・5000m走 ・10km走 ・ハーフマラソン ・マラソン ・ウルトラマラソン |
それぞれで
・エネルギーの大きさ
・エネルギーの持続時間
が異なるんだね。
そこが一番大きな違いです。
① ATP-CP系 (ATP-PCr系)
→ 瞬発的で大きなエネルギーを生み出す。
ATP-CP系 (ATP-PCr系) は・・・
■ATP-CP系 (ATP-PCr系)■
[性質] 無酸素性
[特徴] 瞬発的で、大きなエネルギーを発揮する。
[持続時間] 7~8秒間
[主な原料]
・CP (クレアチンリン酸)
[主な活用場面]
・100m走
・跳躍種目
・投てき種目
・高強度の筋トレ
PCrって何?
ATPのリン酸(P)とクレアチンリン酸のリン酸(P)を交換することで、ATPの再合成を行います。
CP = PCr … Phosphocreatine クレアチンリン酸
しかし、爆発的なエネルギーを瞬時に生み出すことができるので、短距離走や瞬発系のスポーツ、高強度瞬発系の筋トレなどで重要になります。
また、ATP-CP系は無酸素性エネルギー代謝システムの一つで、エネルギー代謝において酸素を必要としません。
詳しくは別記事で解説します。
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② 解糖系 (無酸素性解糖系)
→ 比較的素早く、ある程度大きなエネルギーを生み出す。
解糖系 (無酸素性解糖系) は・・・
■解糖系 (無酸素性解糖系)■
[性質] 無酸素性
[特徴] 比較的素早く、ある程度大きなエネルギーを発揮する。
[持続時間] 33秒間
[主な原料]
・糖質(グリコーゲン)
[主な活用場面]
・400m走
・800m走
・1500m走
・5000m走
一般的に解糖系と言えば、無酸素性解糖系を指します。
しかし、酸素を使って糖を分解することもあるので、この場合は③の有酸素系に分類されますね。
糖を分解するからと言って、酸素は使わないというわけではありません。
そして、無酸素性解糖系は持続時間が33秒。
これでも、まだまだマラソンランナーにとっては短いね・・・
33秒間というと200mくらいしか走れないことになりますね。
ただし、これはあくまで解糖系のみを使って走った場合の話です。
実際にはATP-CP系や次に紹介する有酸素系も併用しながら走っているんですよ。
複数のエネルギー代謝システムを併用することで400mや1500mといった距離も走りきることができるのです。
③ 有酸素系
→ 持続的で小さなエネルギーを生み出し続ける。
有酸素系 は・・・
■有酸素系 (無酸素性解糖系)■
[性質] 有酸素性
[特徴] 持続的で、小さなエネルギーを発揮し続ける。
[持続時間] 2時間以上
[主な原料]
・糖質(グリコーゲン)
・脂質(トリグリセリド)
・たんぱく質(アミノ酸)
[主な活用場面]
・5000m走
・10km走
・ハーフマラソン
・マラソン
・ウルトラマラソン
ウォーキングやジョギング、ヨガなど強度が低く持続的な運動ではこの有酸素系が主に使われます。
有酸素系のエネルギーは瞬間的な力は小さいですが、原料さえあればかなり長時間(2時間以上)持続します。
主に
・糖質 (グリコーゲン)
・脂質 (トリグリセリド)
です。
脂質は油。
要するに、食事で摂る栄養素のことだね!
お腹ペコペコの状態(飢餓状態)では、身体は動きませんよね。
マラソンの後半、エネルギー切れを起こして走り続けることが出来なくなっているランナーをよく見かけます。
あれは「エネルギーの原料である糖質が枯渇してしまった状態」と予想されます。
エネルギー源がなくらないように工夫をしているということか。
長距離ランナーは、
「3種類のエネルギー代謝システム」を併用しながら走っている。
マラソンや長距離走は長時間の運動だから、マラソンランナーは有酸素系だけ使っているという事?
長距離走、マラソンは「有酸素運動」と言われているように、確かにエネルギー代謝としては有酸素系を使う割合がかなり高いです。
しかし、解糖系やATP-CP系を全く使わないかと言えばそうではありません。
例えば、走り始めの時やペースが急激に上がる時、呼吸がゼーハー言うくらい速いペースで走っている時などは、長距離ランナーは無酸素性(解糖系・ATP-CP系)のエネルギー代謝も行なっています。
練習で1000m×5本などのインターバルを行う時は速いペースで走るわけですが、この練習においてもエネルギー代謝は無酸素性(解糖系・ATP-CP系)を使っているでしょう。
また、10kmや5000m、1500mなど距離が短くなってより速いスピードが求められるレースでは解糖系のエネルギー代謝の割合が高まります。
長距離ランナーは、「3種類のエネルギー代謝システム」のそれぞれを併用して使っているのです。
そして、走る距離や速度に応じてその割合は変わっていくというわけです。
マラソン練習では、
それぞれのエネルギー代謝機能を適切な比率で高めよう。
完走が目標のランナーは別ですが、マラソンでタイムを縮めたいというランナーであれば「42.195kmという定められた距離をいかに速く走り切れるか」という“スピードの視点”が必要になります。
そうした“スピードの視点”を持つと、あなたがマラソン練習で向上させるべきは有酸素系だけではいけないということに気付くでしょう。
確かに、マラソンは有酸素系をメインに使うスポーツですが、呼吸がゼーハー言うくらいのペースで走って無酸素性エネルギー代謝機能を高めるというトレーニング(無酸素系トレーニング)も必要になってくるのです。
ゼーハー言うくらい速いペースって辛そうだなぁ・・・。
あくまで有酸素トレーニング(ジョグやLSD)を基本として行いつつ、時折、自分のスピード能力を高めるために無酸素トレーニング(インターバルやレペティション)を行いましょうと言うことですね。
つまり、バランスの問題です。
◆まとめ
では、まとめまーす。
■『3種類のエネルギー代謝システム』について、押さえておきたいこと■
⑴ エネルギーの源は、ATP (アデノシン三リン酸)。
⑵ 3種類のエネルギー代謝システム
① ATP-CP系 (ATP-PCr系)
→ 瞬発的で大きなエネルギーを生み出す。
② 解糖系 (無酸素性解糖系)
→ 比較的素早く、ある程度大きなエネルギーを生み出す。
③ 有酸素系 (TCA回路)
→ 持続的で小さなエネルギーを生み出し続ける。
⑶ 長距離ランナーは主に有酸素系を使っているが、スピードを高めて走る為には解糖系やATP-CP系といった無酸素性エネルギー代謝も使う必要がある。
(3種類のエネルギー代謝システムを併用ながら走っている。)
⑷ マラソン練習を組み立てる時も、この3種類のエネルギー代謝機能を適切な比率で高める事を意識しよう。
■参考書籍、リンク■
[参考書籍]
■『運動・からだ図解 生理学の基本』(中島雅美 監修)
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■『ダニエルズのランニングフォーミュラ 第3版』(ジャック・ダニエルズ 著)
(2021/02/24 23:43:34時点 Amazon調べ-詳細)
■『基礎から分かる!中長距離トレーニング』(櫛部静二 著)
(2021/02/25 20:16:08時点 Amazon調べ-詳細)
■『ランニングの科学』(鈴木清和 著)
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■『中長距離・駅伝』(両角速 著)
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